アンパンマンは暴力的だから子供の教育に悪影響を与えるのか?

アンパンマンは暴力的だから子供の教育に悪影響を与えるのか?

アンパンマンは最後にアンパンチでばいきんまんをやっつけるのでそれを子供が真似して暴力的になるという意見があります。
これを言っている人も本心でそんなことを思っているというより「温かいイメージのアニメの中に独自の暗い解釈を見出した自分」をアピールしたいだけということが多いのですが中には本気でそう思っている人もいます。

結論からいうと自分や大切な人を守るときの防衛手段として暴力を用いることはあるかもしれませんが、暴力的な性格になるとまでは言い切れません。

大人が暴力にどのような意味づけをするかが重要

たとえそれがテレビの中の出来事であっても暴力シーンを見ると小さな子供は影響を受けてしまう可能性はあります。

1960年代にアルバート・バンデューラというカナダの心理学者が行った実験があります。

その実験では大人が人形に暴力を振るうシーンを子供に見せたところ同じように暴力的な行動を取りました。

有名な実験なので聞いたことのある人もいるかもしれません。
子供の観察学習について説明するときに引き合いに出されることが多いです。

しかしこれは実験の一部分を説明しているに過ぎません。

映像の中で暴力を振るった大人が他の大人に注意されるシーンまで見た子供は暴力的な行動は取らなかったのです。
つまりそれがいけないことだと分かれば暴力を見てもそれを真似しないということです。

後から子供に「人形に暴力を振るったらご褒美をあげる」というとどのパターンの映像を見せられても暴力的になりました。

周囲の大人がその行動の意味づけをどのようにするかが大切ということです。

自衛のための暴力

暴力シーンを見てもそれがどういうシチュエーションによって行われているかを脳は区別しています。
残虐な暴力と何かを守るための暴力では脳内で反応する部分が異なるのです。

これは幼児ではなく18歳から22歳までを対象に行ったものですがペンシルバニア大学の研究があります。
暴力的なシーンのビデオクリップを見せてそのときの脳の反応を調べたものです。

この研究によると正当な暴力を見たときには道徳の認知評価に関連する部分が活発化しました。
不当な暴力を見たときには嫌悪事象に反応する部分が活発化しました。

自衛手段としての暴力とそうでない暴力では許容度に差が生じるということです。

だからといって正義のヒーローが敵を退治するシーンを見たからといって自衛のための暴力をする傾向が高まるとは結論づけられてはいません。

アンパンマンはなぜ頭を食べさせるのか?

アンパンチよりも自分の頭をちぎって食べさせるほうがよほどトラウマになると思うのですがこれにも深い意味があります。

作者であるやなせたかしさんは「正義はかっこいいものではない」ということを述べています。
自分自身が傷つかずに人を助けることなど出来ないということです。

やなせさんは「正義とはお腹をすかせている人にパンをあげること」とも言っています。
でもそれによって自分の食べる分はなくなるかもしれません。

人を助けることは犠牲をともなうことだということを伝えるためにアンパンマンは自分の頭を削っているのです。

やなせさんのエッセイを読むと分かるのですがアンパンマンは哲学的な意味を持ったアニメです。
誰でも思いつくような安易な視点で見るのではなくもっと深い部分を見つめるとアンパンマンを通して子供に伝えられることがたくさんあるということに気がつくはずです。

余談ですが「アンパンマンは最後は暴力で解決する」という意見は私の知る限りでも90年代からあったので聞いたことのある人はけっこういます。
ですからドヤ顔で言ってしまうと非常に恥ずかしいので気をつけましょう。

参考文献:Bandura, A. (1965). Influence of models’ reinforcement contingencies on the acquisition of imitative responses.

Azeez Adebimpe, et al.(2019)Intersubject Synchronization of Late Adolescent Brain Responses to Violent Movies: A Virtue-Ethics Approach

心理学カテゴリの最新記事