中華料理店症候群とは1960年代に作られた誤った医学用語です。
中華料理を食べることで発症するとされていました。
グルタミン酸ナトリウム症候群と呼ばれることもあります。
チャイニーズレストランで食事をしたアメリカ人が頭痛、歯痛、頭痛、顔面紅潮、発汗、動悸などをを訴えたことで知れ渡るようになりました。
しかし今では料理とこれらの健康被害の関連は完全に否定されています。それでも一部の人々は信じているようです。
アメリカの医学雑誌が発端
中華料理店症候群が最初に言及されたのは1968年です。
医師であるロバート・ホー・マン・クォックが医学雑誌「New England Journal of Medicine」に書いた文章だと言われています。
彼はそこに「中華料理を食べる度に痺れを感じる」ということを書きました。
その後も同じような健康被害が報告されアメリカで騒動になりました。
「中華料理は危険だ」という風評被害が広まったのです。
原因はグルタミン酸ナトリウム(MSG)とされたがこれも間違いだった
その後の研究により中華料理によく使用されるグルタミン酸ナトリウム(MSG)が健康被害の原因とされました。
(MSGは日本の化学者・池田菊苗によって発見されたうま味調味料として使われているものです。日本でも「味の素」としてよく知られています)
しかしその後の研究ではMSGが中華料理店症候群で言われる健康被害とは関係がないということが分かりました。
最終的には米国食品医薬品局(FDA)を含む研究機関が因果関係がないことを科学的に証明しました。
その後も現在まで中華料理店症候群が存在することを証明するエビデンスは存在していません。
それでも気持ち悪くなるのは別の原因
それでも中華を食べると気持ち悪くなるという人もいます。
しかしその原因は別のところにあると考えられます。
例えば頭痛については塩分の過剰摂取によって血管が収縮するために誘発されている可能性があります。
まや胃もたれやムカムカについては古い油を使っている場合などに起こる消化不良かもしれません。
これらの症状は中華料理以外でも起こります。
実験によってはイタリア料理やメキシコ料理のほうがこういった体調不良が起こりやすいとされることもあります。
いまだに信じる人々もいる
グルタミン酸ナトリウム(MSG)が危険だという風評が広がったときに多くのレストランが「NO MSG」という看板を掲げました。
「MSG未使用」という意味です。だから安全ですよとアピールしたのです。
安全性が確認された後もこの看板を掲げているレストランは残っています。
それを見た人々が「やっぱり危険な調味料なのだ」と思ってしまうこともあります。
また人間の脳は後からデマと知らされても真実として記憶してしまうことがあります。
実際に今でも中華料理店症候群を信じている人はいます。
「MSGを使用していない中華料理の一覧」などという記事が書かれることもあります。
日本でも「アメリカでは味の素の販売が禁止されている」というフェイクニュースを信じている人もいます。
こういった誤解を解くためにMSGを販売している会社がキャンペーンを行ったり、中華料理店症候群という単語が収録された辞典への再定義などの働きかけを行っています。