嘘をついたり不正行為をすると共感力が落ちて人の感情が読めなくなります。
これはもともと共感力のない人だから嘘をつくことに抵抗がないと考えることもできます。
しかし実験では不正行為そのものが相手の感情を分からなくするという結果も出ています。
つまり根っからの嘘つきでなくともこのような状態に陥るということです。
ミシガン大学の実験
ミシガン大学のジュリア・リーは嘘や不正行為が感情を読む力にどのような影響を与えるのか調査しました。
最初の調査では200人以上の社会人に職場で不正行為をした頻度を尋ねました。
その後に俳優の表情から感情を読むテストを受けさせました。
その結果、不正の頻度の高い人ほど感情の読みが不正確であることが分かりました。
また別の実験ではサイコロの出る目を予想してお金がもらえるギャンブルを行いました。
この実験は目が出る前に予想を言うグループと目が出てから予想を言うグループに分けられました。
つまり後者は嘘とついてズルをすることも可能です。
後者のグループの方が当たった確率が高かったことから彼らが不正を行ったことを示唆しています。
そして表情を読むテストを行いました。
嘘の予想を言って不正をしたグループの参加者のほうが感情を正確に読むことができませんでした。
この実験は不正行為そのものが感情を読む能力を低下させる可能性を示唆しています。
騙した相手は大切な相手ではないと思いたい
なぜ実験のような結果になったのでしょうか?
一つの可能性として相手と距離を取ろうとすることが考えられます。
私たちは大切な人や親密な人を騙したいとは思いません。
そのため騙した相手は自分とは関係の薄い人だと思い込もうとするのです。
「嘘をついてしまったけれど大事な相手ではないからまあいいか」と考えれば罪悪感を減らすことができます。
距離のある相手には共感が沸きにくくなりますから感情も読めなくなるということです。
嘘が成功するとエスカレートする
嘘つきは人の感情を読むのが得意と思われているかもしれません。
詐欺師は相手の心理を読むのが上手いように感じます。
しかし彼らは人間が騙されるパターンを多く知っているだけなのかもしれません。
もしくは感覚が麻痺してどんな悪事を働いても感情が影響を受けないのです。
他の実験では嘘が成功するとその後により酷い嘘をつくようになるということも分かっています。
嘘はほどほどにしたほうが良いでしょう。
参考文献:Lee, Julia J, et al. (2019). The interpersonal costs of dishonesty: How dishonest behavior reduces individuals’ ability to read others’ emotions.