効果的な社員研修の方法・Transfer problem(転移の問題)を発生させないための研究

効果的な社員研修の方法・Transfer problem(転移の問題)を発生させないための研究

社員研修で学んだ内容を実際の仕事で活かすことを「研修の転移」といいます。
研修の効果があったかどうかはこの研修の転移がどれくらい出来たかによって決まるといえます。

しかし研修で学んだことが活かされることは少ないです。
最終的には10%から20%ほどしか活かされなくなるとも言われています。

このように研修で得た知識やスキルが職務上で活用されないことを「Transfer problem(転移の問題)」といいます。
このTransfer problemを起こさないためにどうすれば良いでしょうか?

4:2:4の法則

研修の研究についての権威とされるウェスタンミシガン大学のRobert O. Brinkerhoff氏が「4:2:4の法則」というものを提唱しています。

それによると研修の効果に影響することの割合は研修前に4割、研修そのものに2割、研修後に4割あるということです。

研修の成否を分けるのは研修をしているときだけではありません。
その研修の前後に何をするかも重要ということです。

効果的な研修を行う方法

イリノイ大学が研修に関する研究を分析し、その中から研修効果を高める手段を抽出し整理した論文があります。
この論文は研修前、研修中、研修後という3つの段階に分けて、それぞれの段階ごとに重要とされるポイントを記載しています。
それらについて説明します。

1.研修前

まず重要なことは組織の目的に合った研修を準備するということです。
そのためには経営陣、管理職、現場社員、新入社員といった階層ごとのニーズを分析する必要があります。
受講者は研修の内容がニーズに合っていると思うことで研修に対するモチベーションが上がることも分かっています。

また研修で学んだことを活かせるかどうかは組織の受容の度合いの影響を受けます。
研修の重要性を組織全体が認識し、仕事量を減らすなどのサポートをする環境も必要です。
そのためには研修に参加するメンバーが所属するチームの管理者等に便宜を図ってもらえるように情報共有をすることも有効となります。
仕事量が多いまま研修に参加すると認知リソースを割けなくなり効果が薄れることもあります。

研修を受ける側の準備が整っていることも重要です。
研修内容と受講者のレベルやスキルが合っていなければなりません。
新入社員に経営戦略の研修をしても無意味ですし、営業の人にいきなり財務の研修をしても無意味なのです。

研修前に受講者のモチベーションを高める必要もあります。
研修に参加することでどんな効果があるのか理解させたり、学びを実践する機会があると思わせることでモチベーションを高めることができます。

2.研修中

研修中は受講者を集中させる必要があります。
そのために講師が一方的に説明をするのではなく、アイデアを出せたりお互いに質問し合ったりします。
またやる気や自信を高めさせるために研修中に間違いやミスをしたときは成長の機会と捉えさせるような指摘のしかたをします。

講師側も規定のテキストやマニュアルをそのまま話すだけではいけません。
研修の中で受講者が理解しにくい箇所や勘違いしにくい箇所がないか意識し、研修内容を改善するヒントを見つけます。
そして研修内容をアップデートしていくのです。

3.研修後

研修を意味のあるものにするためにも学んだことを活かす機会を与えましょう。
実践させるだけではなくフォローアップの機会を作ることも必要です。
問題点やアイデアを気軽に相談できる環境を整えてください。

また受講者に「研修内容をどう活かすか?」という短期と長期の目標を立てさせることでさらに研修の効果が高まります。

組織としては研修後の実践を観察し、研修の効果がどれくらいあったのかという評価も忘れてはいけません。
それを繰り返し社員の職種やレベルに最適な研修内容を確立していくのです。
研修の効果を測定するためのスケールは色々なものがあるので自社にあったものを選びましょう。

受講者の態度を真剣にさせるためのコツ

受講者に集中して話を聞いてもらい、その内容を受け入れてもらうためのコツも紹介しておきます。
それは研修の権威性を高めることです。

簡単な方法は権威のある人間が研修を担当することです。
新入社員研修をする際に2年目の社員が担当するときと総務部長が担当するときでは受講態度が変わります。

だからといってあなたがまだ若手社員で権威性がなかったとしても大丈夫です。
他人の権威を借りれば良いのです。

「この研修は役員も期待している」と言えばたとえあなたが若手であっても受講者の態度は変わります。

もっと大切なことは組織全体が研修を重要なものであり実践で役に立つものであるという認識を持つことです。
そういった認識が共有されていれば受講者は自ずと高いモチベーションで研修に参加します。

それによって研修の効果も高まるのです。

参考文献:Ashley M Hughes, et al.(2018).A checklist for facilitating training transfer in organizations