デマと知らされた後も真実だと記憶してしまうのはなぜか?

デマと知らされた後も真実だと記憶してしまうのはなぜか?

世の中に出回るデマや都市伝説はたくさんあります。
大勢が本当だと信じている内容でもテレビ番組などで「嘘でした」と伝えるとしばらくは話題にならなくなります。
しかし数年するとまた本当の話のように語られることがあります。

このように一度「嘘です」と知らされた後も真実として記憶されたままになったり、何かの意思決定に影響を与え続けてしまうデマにはいくつかの共通する特徴があります。

柑橘系のジュースで薬を飲むと効かない?

ホフストラ大学のアン・ハンビー博士らのグループは人間がある情報をデマと知らされた後もその影響を受ける可能性があることを実験で明らかにしました。

実験の参加者たちは病気のキャラクターが薬を飲んでも治らないというストーリーを読まされました。
あるグループには飲む時間を間違えているから薬が効かなかったのだと知らせますが、もう一方のグループには知らせません。
その後に両グループともキャラクターがレモネードのグラスで薬を飲んだと伝えられます。
そして柑橘系のジュースと一緒に飲むと薬は効かないとも教えられます。
最後に両グループとも柑橘系のジュースで薬を飲むと効かないというのはデマだと知らされます。

翌日に参加者たちは薬が効かなかった原因を思い出すよう言われます。
その結果、飲む時間を間違ったからという理由を教えてもらえなかったグループの参加者たちは嘘だと教えられたにも関わらず柑橘系のジュースについて言及しました。

別の実験ではとあるポーカープレイヤーが昆布茶を飲むのが好きだというストーリーを読まされます。
一方のグループには昆布茶は精神的なパフォーマンスを高める効果があると知らされます。
もう一方のグループには昆布茶は筋肉の機能を増大させる効果があると知らされます。
そしてどちらのグループも最後にはそれらの効果はデマだと教えられます。

この実験では精神的なパフォーマンスを高める効果があると知らされたグループはその情報が真実であるとして思い出す可能性が高くなりました。

最初の薬のストーリーではハッピーエンドとバッドエンドの2パターンが用意されていました。
バッドエンドを読まされた人の方が柑橘系のジュースで薬を飲むと効かないという嘘情報からの影響が継続し難かったことを発見しました。

(※柑橘系と一緒に飲むべきではない薬は実際に存在します)

ストーリーを補完し理解と納得を助けるデマは真実として記憶されたままになりやすい

これら一連の実験結果から分かることは何でしょうか?

まず1つ目はたとえそれが嘘と分かっていてもストーリーを完成させてくれる情報である場合には強い影響を及ぼすということです。
薬が効かないストーリーでは飲む時間を間違えていたからという情報を知らされていなかった人たちには「なぜ?」という疑問が生じます。
ストーリーが完成しないのです。アン・ハンビー博士らはこれを「ギャップ」と呼んでいます。
たとえデマでもそのギャップを埋めてくれるといつまでもそこに残り続けてしまうのです。

次に適度な関連性とストーリーの理解に寄与する情報も真実と思い込みやすいということです。
ポーカーと昆布茶の話では精神的パフォーマンスの向上と筋肉機能の増大という2つのデマが伝えられました。
ポーカーに関連づけしやすいのは精神的なパフォーマンスです。そのためこちらのデマを知らされた参加者のほうが真実と思い込みやすかったのです。

最後に悪い結果につながることは情報の真贋を覚えておきやすいということです。
薬のストーリーではバッドエンドを読まされた人たちのほうが嘘情報からの影響が継続しませんでした。
これは人間の生存戦略として悪いシチュエーションに関連する情報はしっかりと覚えておかないと次回同じことが起こったときに対応できなくなるからです。

つまり人間は納得しやすくて理解を助けてくれる情報はデマと知らされた後も真実として記憶されてしまう可能性があるということです。
そしてそれが更に悪い結末に繋がるものでなければこの傾向はより強まるのです。

世の中の人がいつまでも信じているデマの多くがこれらの条件を満たしています。
「人はつまらない真実よりも面白い嘘を信じる」と言われますがまさにその通りなのです。

参考文献:Anne Hamby,Ullrich Ecker,David Brinberg(2019)How Stories in Memory Perpetuate the Continued Influence of False Information