大人も子供も想像力がないのではありません。
それを発揮させないフィルターがかかっているのです。
想像力を伸ばすための方法は関係なさそうな情報でも遮断しないことです。
想像力を阻むもの
脳の中には前頭前野という部分があります。
ここは認知制御の中心的な機能を担うと考えられています。
つまり今取り掛かろうとしている目の前のタスクと無関係な思考、知覚、記憶が干渉しないようにフィルターをかけています。
邪魔な情報を遮断しているともいえます。
決まりきった作業を行う場合にはこのフィルターがあったほうが集中できます。
しかし答えの決まっていないイマジネーションを必要とする作業では逆効果になる可能性があります。
なぜなら必要ないと思われる情報も想像のヒントとなり得るからです。
それを遮断されると新しいアイデアは生まれ難くなってしまいます。
電流を流して前頭前野の働きを弱めたらどうなる?
上記の前頭前野が本当に想像力の邪魔になっているのか調べるにはその働きを弱めれば分かります。
その状態のときに新しいアイデアが生まれやすくなるか確認すれば良いのです。
ペンシルバニア大学のシャロン・トンプソン・シル博士は実際にそれを実験で証明しました。
tDCS(経頭蓋直流電気刺激)という頭皮上に設置した電極から弱い直流電流を流す装置を使って前頭前野の働きを弱めました。
実験では被験者を以下の3つのグループに分けました。
- 左前頭前野にtDCSを使用
- 右前頭前野にtDCSを使用
- 何も使用せず(プラセボに相当する操作のみ)
この3つのグループにそれぞれ想像力を試すテストをします。
内容は60個のモノを見せ本来の使い方とは別の方法を答えさせるというものです。
例えば野球のバットを麺棒として使用するなどです。
このテストの結果、左前頭前野にtDCSを使用したグループは平均52個のものに対し別の用途を思いつきました。(応答速度も約1秒速かった)
それ以外の2グループは平均45個でした。
つまり左前頭前野による認知制御が想像力を阻んでいるということです。
算数の勉強中に国語の話をしても怒ってはいけない
前頭前野の制御能力は成長とともに高まっていきます。
子供が注意力の必要な作業では失敗ばかりしても、大人にはない想像力を発揮するのはこのためです。
情報の遮断が起こっていないのです。
研究を行ったトンプソン博士によれば学習時にフィルタリングをさせないことが重要とのことです。
子供が算数の勉強をしているときに国語の話をしたからといって「今は関係ないでしょ!」と怒ってはいけません。
想像力が落ちてしまいます。
フィルターをかけすぎないことは新しい知識を習得する際にも役立ちます。
【注意】
余談ですが実験で使用されたtDCS(経頭蓋直流電気刺激)は自分で脳を調整することで頭が良くなるという噂が喧伝されています。
日本でも粗悪品が販売されたり自作方法がネットに上がったりしています。
しかし安全性の確認が全く取れておらず非常に危険ですから注意してください。
子供の成績が伸びないからといって使ってはいけません。余計に能力が落ちることもあります。
参考文献:Evangelia G. Chrysikou, Sharon Thompson-Schill, et al. (2013). Noninvasive transcranial direct current stimulation over the left prefrontal cortex facilitates cognitive flexibility in tool use.