リマ症候群:犯人が人質に対して特別な感情を抱くこと

リマ症候群:犯人が人質に対して特別な感情を抱くこと

リマ症候群とは立てこもりの犯人などが人質に対して同情や思いやりといった特別な感情を抱く現象です。

個人的なことや将来の夢について対話したりする中で特殊な絆が結ばれます。
すると人質に危害を加えないようにし、拘束を解き自由を与えることもあります。
体調の心配をしたり時には恋愛感情を抱くことさえあります。

リマ症候群は人質が犯人に同情するストックホルム症候群と反対の状態です。

この言葉の語源はペルーのリマにおいて発生した在ペルー日本大使公邸占拠事件です。

犯人と人質の交流

1996年12月17日の夜にトゥパク・アマル革命運動(MRTA)のメンバー14人が在ペルー日本大使公邸を占拠しその場にいた約600人を人質にとりました。人質は順次解放され最終的には男性のみ約70人まで減ります。

この事件は特殊部隊が強行突入し犯人が全員射殺されて解決に至るまでには127日もの長い時間が要されました。
その間、犯人と人質は同じ建物内で生活をともにすることとなります。

長い時間を一緒に過ごすことでやがて双方に交流が生まれ特別な関係が生まれます。
語学を教えたり、サッカーの試合などをするようにもなっていたのです。

そして特筆すべき点は強行突入がされたときの犯人グループの取った行動です。

彼らは当初「突入された場合は人質を道連れにする」と宣言していました。
しかし実際にペルー軍が建物内に入って戦闘となったときに犯人たちは人質に危害が加わらないように行動したのです。
これは人質に対して特別な感情が生まれていたからと考えられます。

突入時の被害が少なかったのは作戦が優秀だったからではなく、犯人たちの行動のおかげとも言われています。

リマ症候群が起こる理由

なぜリマ症候群は起こるのでしょうか?

まず考えられることは接触頻度の多さです。

人間は毎日見ているものに対しては親近感や愛着を抱くようになります。
これを心理学では単純接触効果と呼びます。

最初に悪い印象を持ってしまうと起こりにくい効果ではありますが、リマ症候群が起こるようなシチュエーションでは犯人は人質に対して個人的な恨みを抱いてはいないことのほうが多いです。

また人間は自分の行動と心が不一致を起こすと不快感を感じるようになります。
すると行動ではなく心のほうを変化させて自分を納得させようとします。

これを「認知的不協和理論」といいます。

犯人から見たら人質は仲間というより敵です。
それでも深い会話をしたり一緒にレクリエーションをしたりします。
時には相手の精神や身体についての心配もします。

嫌いな相手に対してこのような行動を取ると脳が混乱して気持ち悪く感じます。
そこで「自分は彼らのことが好きだからこういう行動をしているのだ」と認知のほうを変化させるということです。

これらの理由によってリマ症候群が起こると考えられます。

2019年には渡辺謙とジュリアン・ムーア出演でテロリストと人質の特殊な絆を描いた映画『ベル・カント とらわれのアリア』が上映されました。

原作を書いた小説家アン・パチェットは在ペルー日本大使公邸占拠事件から着想を得ており、リマ症候群に焦点を当てた内容となっています。