数学が得意な女子生徒は将来の年収が低くなる?

数学が得意な女子生徒は将来の年収が低くなる?

一般的なホワイトカラーの仕事に比べてコンピューターサイエンスや金融工学などに関連する職業は年収が高い傾向にあります。
そしてこれらの職業に就くためには数学をはじめとする理系の能力が高くなければなりません。
しかし数学が得意な女子生徒ほどそういった高収入の職業を目指さずに文系にいく力がはたらく可能性が示唆されています。

数学が得意な女子生徒は読解力も高い

国際学力テスト(PISA)というものがあります。
OECD(経済開発機構)に加盟する国の子供の義務教育終了段階での学習到達度を測るためのものです。

ニュースなどで「日本の子供の読解力が落ちた」とか言われるときに参照されるアレです。

国際学力テストは読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3つの分野についての測定が行われます。

パリ・スクール・オブ・エコノミクスのトーマス・グレダ教授らがこのテストの結果を分析した内容が米国科学アカデミー紀要に掲載されています。

それによると数学については男子生徒のほうがわずかにポイントが高いということが分かりますが、全体としては男女でそれほど大きな差はありません。
しかし数学で高得点をとった女子生徒の場合は読解力で男子よりも良い成績を収める可能性がはるかに高いことが分かりました。

ここに将来の年収に関するヒントがあります。
男子生徒の場合、数学が得意ならそれを活かす専攻に進む可能性が高いといえます。
しかし女子生徒の場合は数学が得意だと読解力も高いためそちらの専攻に行く可能性が高いのです。

そして文系の職業に就く可能性も高くなるため理系を活かした職業に就いたときよりも年収が低くなるということです。

男女平等の進んだ国ほど理系女性の割合が少ない

より得意な分野を選択するという理由だけで理系の女性が少ないという説明にはなりません。
他にもいくつかの要因が挙げられます。

例えば専攻を決める10代の時点ではどういった職業が稼げるかの判断はつかないことがあります。
また世の中のジェンダーバイアス、つまり「男が家族を養うもの」といった空気が影響していることもあります。
そのため女性は男性と比べて年収で仕事を選ぶ傾向が少ないともいえます。

別の研究では男女平等の進んだ国ほど理系科目の学位を取る女性の割合が少ないという結果もあります。
これは何を意味するかというと男女平等の進んでいる国は福祉も充実した豊かな国であるため年収にそこまでこだわる必要がないということです。
お金よりも好きかどうかで職業を選びやすいのです。

こういった条件を考えると日本も理系の職に就く女性が少ないことに納得がいきます。
日本はよりその傾向が強いかもしれません。
同じ会社に入れば何の技術もないホワイトカラーも優秀なエンジニアも給料にほとんど差はありません。
すると「あのレベルの人間でもあれくらい稼げるなら大丈夫だろう」という考えになりやすいです。
そして人よりも得意で稼げる能力よりも、人よりもっと得意だけれどまあまあ稼げる能力でする仕事を安心して選択できるようになります。

また男性の多い職場では男性が働きやすいように様々な制度や仕組みがデザインされます。
すると女性は余計に働き難いというイメージを持ってしまうため人数が増えないのです。

ただしこのままテクノロジーの進化が止まらなければ理系の優秀な層の価値が今以上に高まりますから男女の比率も変化するかもしれません。

参考文献:Thomas Breda,Clotilde Napp(2019)Girls’ comparative advantage in reading can largely explain the gender gap in math-related fields