SNSに投稿するために撮影すると記録には残るが思い出には残らなくなる

SNSに投稿するために撮影すると記録には残るが思い出には残らなくなる

どこに行っても何をしていてもそれを撮影してSNSに投稿する人がいます。
自分が何をしているのか知って欲しいという欲求が強いのかもしれません。

人によってはこの行為が精神的な安定につながったりストレスの解消になることもあるという研究もありますから悪いことではありません。

しかし思い出として心に残しておくという観点では何でもかんでもSNSに投稿するのは最適な方法ではありません。

写真やビデオを撮影することに集中してしまうと記録には残せても記憶には残せないのです。

メディアに記録しただけで記憶力は落ちる

プリンストン大学のダイアナ・タミール博士らはSNS用の写真やビデオを撮影しながらイベントに参加すると記憶にどのような影響があるのか調べる実験を行いました。

実験では被験者にTEDトーク(著名人のスピーチのイベント)やスタンフォード大学内にある教会のセルフガイドツアーに参加して様々なメディアでそれを記録してもらいました。

実験の結果、メディアを使用した人たちはそうでない人たちと比べて自分のした経験に対する記憶が約10%劣っていました。
これは記録した後に他人とシェアしたかどうかは関係ありませんでした。単に保存しただけの場合も記憶に影響を与えていたのです。

写真撮影減殺効果

なぜ実験のようなことが起こるのでしょうか?

理由として考えられるのは「写真撮影減殺効果」です。
簡単にいうと写真を撮ることによって記憶が失われるということです。
「保存したからまあいいや」と考えて覚えておこうとしなくなるのです。

上記と同じような実験ですがフェアフィールド大学のリンダ・ヘンケルが大学内の博物館で行った実験でもこの効果は明らかにされています。

博物館のガイドツアーに参加した学生に写真を撮るか自分の目で覚えるかしておくように指示しました。
そして翌日に内容を覚えているかテストしたところ写真を撮っていた学生のほうが展示物に対する正確な記憶が劣っていたのです。

ただし展示物の一部分をズームして撮影した学生たちの記憶はしっかりしていました。

つまり撮影しようとしまいと主体的に見ようとした学生の記憶は悪影響を受けないということです。

「保存したからいいや」と「綺麗な写真を撮らなくちゃ」の合わせ技

最初に紹介したダイアナ・タミール博士の実験では撮影しようとしまいと楽しさや参加しているという実感については有意差がありませんでした。

しかし撮影することに集中すると自分でも無意識のうちに目の前の出来事に注意が向き難くなるため記憶されにくくなっている可能性は否定できません。

観光地の定番スポットで必死に良い角度で撮影しようとしている人たちを見ているとシャッターを押してスマホの画面を確認したらそのまま立ち去ってしまう人が多いです。
せっかく目の前に素晴らしい景色が広がっていても自分の目で直接見ないのです。
これでは記憶に残らないのも当然かもしれません。

さらにSNSにアップしようと考えると「どうしたらインスタ映えするかしら?」などと想像している可能性があります。

つまり「メディアに保存したからいいや」という思考と「綺麗な写真を撮らなくちゃ」という思考の合わせ技で目の前の出来事から意識がどんどん離れてしまうのです。

有名な場所の写真は自分で撮影しなくてもパンフレットやウェブサイトにプロのカメラマンが撮影したものがたくさんあります。
わざわざ劣化版を作る必要はないのです。

SNSに写真をアップしても見てもらえるのはせいぜい数分です。一瞬だけかもしれません。
たったそれだけの時間のために旅行中の貴重な時間の多くを費やすのはもったいないことです。

社会的地位と承認欲求のアンバランスを安易な方法で誤魔化すのはやめましょう。

参考文献:Diana I.Tamir,et al(2018)Media usage diminishes memory for experiences.
Linda A. Henkel(2013)Point-and-Shoot Memories: The Influence of Taking Photos on Memory for a Museum Tour.

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