tDCS(経頭蓋直流電気刺激)による脳刺激はIQを高めるどころか低くする可能性がある

tDCS(経頭蓋直流電気刺激)による脳刺激はIQを高めるどころか低くする可能性がある

IQや集中力を高めるために自分の脳に電流を流すことが一部の間で流行しています。

使用されるのはtDCS(経頭蓋直流電気刺激)というものです。

頭皮においた電極から1ミリアンペア程度の弱い直流電流を通電して脳活動を変化させるという仕組みです。

うつ病の治療や運動機能の障害のリハビリに用いられることもあります。

同じような機械を市販品から自作することも可能なため外国などのサイトではその作り方が記載されていることもあります。

アマゾンでもそれらしい装置が販売されています。

自分の脳に試す様子をyoutubeで配信している一般人もいます。

ただしこれは非常に危険な行為です。

そもそもtDCSによってIQが高くなるという信憑性のあるエビデンス(科学的根拠)は存在しないのです。

本当にIQが高くなるのかという実験

ノースカロライナ大学医学部がtDCSによって本当に頭が良くなったりIQが高まるのかということを実験で確かめました。

実験の方法

40人の健康的な成人が集められました。

最初に参加者はWAIS-4(ウェクスラー成人知能検査 第4版)というIQテストを受けます。

これは日本でも一般的に使用されているIQテストで言語理解、知覚推理、作業記憶(ワーキングメモリー)、処理速度の4指標に分けられます。

テストの一週間後に参加者は2つのグループに分けられます。

1つのグループにはtDCSによる刺激を与えます。

もう1つのグループにも電気刺激を与えることでtDCSを受けたと思い込ませます。

参加者も自分がどちらの刺激を受けているのか不明な状態にして行っているということです。

そして再びIQテストを受けます。

知覚推理のスコアが著しく低い

練習効果の影響があるはずなので1回目よりも2回目のほうがスコアは高くなるはずです。

実際にどちらのグループも2回目のほうが成績は良かったです。

しかし、tDCSを受けていないグループが10ポイント向上しているにも関わらず、tDCSを受けたグループは6ポイントしか向上しませんでした。

言語理解、作業記憶、処理速度の3つはどちらも差はありませんでした。

しかし知覚推理においてtDCSを受けたグループは著しく低い結果となりました。

知覚推理とは論理的に考え革新的な問題解決を問題に適用する能力として定義されています。

なぜtDCSで頭が良くなるという噂は広まったのか?

tDCSで頭が良くなるとかIQが高くなるという話が広まったのは2000年代になってからです。

ゲッティンゲン大学のミハエル・ニッチェ博士らによって直流刺激で運動皮質ニューロンの興奮性を操作できるという論文が発表されてからです。

もちろん博士らはそれによってIQが高くなるなどとは言っていません。

しかしその後に他の研究者によって行われたいくつかの実験ではテストのスコアが高くなるという結果が出ました。

それにより更に信じる人が増えたのです。

しかしこれらの実験は参加者の人数が少な過ぎたり、二重盲検法で行われていなかったりと問題を抱えているものが多いのです。

tDCSが脳に与える影響は分かっていないことが多いです。

簡単に頭が良くなる方法として使用するには危険すぎるといえます。

2019年にはNHKの番組でも注意を喚起していました。

参考文献:
Kristin K. Sellers, et al. (2015). Transcranial direct current stimulation (tDCS) of frontal cortex decreases performance on the WAIS-IV intelligence test
M. A. Nitsche W. Paulus. (2000). Excitability changes induced in the human motor cortex by weak transcranial direct current stimulation

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