テストステロンだけでは性欲の強さを証明できないかも(デュアルホルモン仮説)

テストステロンだけでは性欲の強さを証明できないかも(デュアルホルモン仮説)

ハゲている人を見ると「性欲強そう」と言うことがあります。
性欲に関係する男性ホルモンであるテストステロンの多さが毛を生えなくさせる原因と考えられているからです。

過去に行われたいくつかの研究でも性欲が強いと認識している人のテストステロン値は高いという結果があります。

そして最近また新たな研究が報告されました。そこでは少し違った結果が見られました。

デュアルホルモン仮説

ドイツのゲッティンゲン大学のジュリア・スターン博士らの研究チームは61人の若い成人男性の唾液からテストステロンを採取しました。

そして性欲の強さとソシオセクシャリティについて回答してもらいました。
ソシオセクシャリティとは「愛情のない相手と性的関係を結ぶ傾向」のことです。
要するに好きじゃなくてもセックスできる度合いということです。

テストステロンが性欲に関係しているのであれば、その値が高い人は「性欲が強くソシオセクシャリティも高い」という結果になるはずです。

しかし結果はそうなりませんでした。相関がなかったのです。

この実験ではコルチゾールも測定していました。
コルチゾールとは副腎皮質ホルモンの一種でストレスを受けたときにもレベルが上がります。

コルチゾールとテストステロンは互いの優位性を失わせるのではないかという仮説があります(デュアルホルモン仮説)
ストレスが溜まると性欲がなくなることがありますがそれが影響しているかもしれないのです。

実験の結果、テストステロン値が高くコルチゾール値が低い男性はソシオセクシャリティが高い傾向にあるということが分かりました。
つまり好きじゃない相手ともセックスしたい欲望が強いということです。

コルチゾールの値が低ければテストステロンの邪魔をしないためこのようなことが起こっているのではないかと考えられます。

テストステロンは性欲だけではなくリーダーシップや競争力にも影響を与えます。
戦いに強い人は情事も好きであるという意味のことわざに「英雄色を好む」というものがありますがまさにそのことを表しています。

実験でもテストステロンと社会的地位には相関があるということが分かっています。
その場合も「コルチゾールの値が低ければ」という条件がつきます。

テストステロンが性欲や競争力に影響を与えるにはコルチゾールとの関係も考慮しなければならないということです。

去勢された男にハゲはいない

余談ですがテストステロンとハゲはどう関係するのでしょうか?

ジェームズ・B・ハミルトンという医師が少年時代に去勢された(男性ホルモンの分泌がほとんどされなくなる)21人の男性が老年になったときを追跡調査したところ、同世代と比べて髪の毛がフサフサだったということを確認しています。
もっと昔では「医学の祖」と言われるヒポクラテスも男性ホルモンとハゲの関係に気づいていたと考えられています。

テストステロンが5αリダクターゼという酵素と結びつくとジヒドロテストステロンに変化します。
このジヒドロテストステロンが毛根への栄養の供給を止め、髪がだんだんとやせ細りやがては生えなくなるのです。

冒頭でも書いた「ハゲは性欲が強い」説の根拠ですね。

「俺は性欲少な目だから大丈夫」と安心してはいけません。
テストステロンが多くなくてもそれなりの量が存在していればハゲるのです。

参考文献:Julia Stern,et al(2019) Men’s sociosexuality: No clear relationships between steroid hormones & self-reported sexual desire or sociosexual orientation; greater desire for casual sex only with relatively low average cortisol.
Mehta PH, Josephs RA(2010) Testosterone and cortisol jointly regulate dominance: evidence for a dual-hormone hypothesis.